夢幻ノ章・序章
四神暦12015年。
ミフナに住む君たちの日常は変わらず、今日もそれぞれの時が流れている。
変わったことがあるとするなら、
君たちの冒険にある魔道具が組み込まれた
ということだ。
使い捨てのこの魔道具は、迷宮内から
外への脱出を可能としている。
……しかし
先程探索を終え帰還したはずの君は……
今、見覚えのない場所を歩いている。
……どこか見覚えのある、壊れた街並み。
……くすんだ色彩。
……空気が悪いのか、ひどく肺が痛む。
……中央には、枯れ果てた大樹。
……呆然とする君に歩み寄り、
話しかけるものが一人。
「……新たに迷い込んだ方ですね」
「一応聞いておきましょう」
「貴方は……四神暦何年から、
いらしたのですか?」
どこか見覚えがあるようなその女性は、君についてくるよう指示を出す。
「ここについては……私達にも、
まだよく分かっていません」
「分かっているのは、異なる時代から冒険者の方々が迷い込んでいるということ」
「あの大樹……
かつて領主館、宿酒場、湯屋のあった位置を
全て巻き込み潰しているあれこそが、
瘴気を生み出しているということ」
「神々との連絡すら通じず、
帰る道程も、希望も、未だ見えません」
「謎多き死の土地……
『廃都ミフナ』そう呼ばれています」
「しかし、この拠点ならば瘴気が防げます。
……貴方も、帰るための手がかりを求め
ここで暮らすことになります」
「……そうだ、申し遅れました」
「私のこと……覚えているでしょうか?」
女性は、ふわりと微笑んだ。
その顔は、どこか……
ひどく、誰かに似ていた。
「私は……ここの代表者。
そして、元いた四神暦12242年にて
『空五倍子の谺』リーダーの役を
いただいております。
……志乃締野花、と申します」
そうして、拠点の扉が開かれる。
……君たちの、新たな生活が始まった。
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